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セドリックも背筋を伸ばす。
「セディ、あなたが選んで。亡命か、戦いか」
アルベルティーヌはまっすぐにセドリックを見つめる。
透き通る青の瞳の中に、燃えるように煌めく緑の瞳が映る。
セドリックが、ふっと微笑んだ。
「……ベルは本当に格好いいなぁ。君がいれば、なんだってできるような気がするよ」
「あなたがいるからよ、セディ」
アルベルティーヌも微笑みで応える。
「僕と一緒に戦ってくれないか、ベル」
セドリックが右手を差し出す。アルベルティーヌはそれを、力強く握り返した。
「喜んで。共に行きましょう。いつまでも、どこまでも」
◇
一ヵ月後、王妃ドロテは、病を理由に離宮で隠居することが決まった。
その実態は、前王妃の暗殺と、第一王子セドリックを陥れようとした罪を理由とする生涯幽閉である。
それと同時に、第一王子セドリックが立太子された。
王太子セドリックと、婚約者の公爵令嬢アルベルティーヌはその一年後に結婚。三人の子宝にも恵まれた。
後に二人は、優しき王と賢き王妃として長きにわたり善政を行った。
王弟クロードもそれをよく補佐したと伝えられている。
セドリックとアルベルティーヌの仲むつまじさは有名で、いついかなるときも互いに寄り添い合っていた。
そしてアルベルティーヌが一足先に老衰で息を引き取るその瞬間まで、互いの手を離すことは二度となかったのだった。
〈了〉
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