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"欠落"現象の始まり
20XX年1月、世界で初めて"欠落"現象が確認される。
空一帯に放電現象のような小さな稲光が次々と走った後、その地域全体は何かが欠落したらしい。
何かとは、起こった地域によって異なる。その地域の何かが一斉に失われ、書換えられてしまう。
明らかな異常事態だ。
事態を重く見た某大国は、国を上げて原因究明へと乗り出した。
その結果、欠落因子を誘発するmissing(欠落)線――M線を発見し、計測する事に成功。
以後、"欠落"現象の予測を立てることが可能となった。しかし、――――
20XX年5月、とある家庭の茶の間にて。
「本日のお天気は晴れ。日中は暑くなり、洗濯日和でしょう……花粉は多く……」
「続いて、欠落注意報です。本日は東北地方と四国地方、北九州地方の一部に注意報が出ています。なお、M線の高まりが増し、危険域に達した場合は警報となり、警笛が鳴り響きますので……」
「あら、イヤだ。うちも範囲内じゃないの!」
「いや、最近はそんなの、よくあることでしょ。っていうか、メシ! 俺、腹減ってるの!」
ハイハイ、と相づちをうって、母が朝飯を持ってきた。
俺、小原木久良、17才。
K高校、2年生。青春真っ盛りだぜ! のハズが、特に何もない(泣)
「年初に"欠落"現象が起きた時には、大騒ぎしたものだがなあ」
「そうよね、お父さん。私もニュースにかぶりつきだったわ~」
「いやでも、警報範囲、広すぎでしょ? 精度もイマイチだし、すぐ警報から注意報へと警戒を落とされたし」と俺。
「そうねぇ、今じゃ毎日、何処かしらが範囲にかかってるしねぇ。その割には、被害はトンと聞かないし」
「日本でも1件あったらしいぞ。そこは完全隔離されているから、周知されていないとのことだ。世界現象だから、パニックにならないよう、情報規制されてるかもな」
あら、怖いと言いながら、俺に飲み物を注ぐ母。
俺は猛然と朝飯を食べ始めた。
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