お題は「黒」

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お題は「黒」

 そして、迎えた体育大会。  様々な激戦が繰り広げられた後、お昼休憩をはさみ、今から後半戦に突入。  時は満ちた、俺の出番だ!  いよいよ午後一番の借り物競争が始まる。  しっかりお昼ご飯を満喫した俺は、エネルギーチャージ済みだ。  縦割り1年から3年の5クラス対抗戦を、ぜひともここで制したい。  ちなみに俺は5組の黒チーム。  4組の白チームに僅差で負けているが、ここで勝てば、単独トップに躍り出る。  ここは、英雄になる大チャンス!  やるぞ、やってやるー!  気合い十分、トップバッターは俺だ。  インコースから、1組赤、2組黄、3組青、4組白、5組黒が並ぶ。  目指すは、数十m先に伏せられたカード! 「ヨーイ!」  パァーン!!  ピストルの音と同時に飛び出す。  スタートダッシュは得意中の得意なんだ。悪いな、先手必勝だ!  超集中モードの俺。  周りの音なんて、聞こえない。  そのまま、1番でカードに飛びつき、メッセージを開いて読む。 【黒を身に着けた人、又は品物を持ってくること】  お題は「黒」か。  よし、黒――――その瞬間、何とも言えない感覚と共に、世界が変容する。  何かが、欠落した。  俺に襲いかかる、喪失感。  思わず握りしめ、クシャクシャになったカードを呆然と見つめる。  そこには、 【 ¥#9?& を身に着けた人、又は品物を持ってくること】とある。  ¥#9?& って、何だ?!  ……いや、そうだ。  俺はソレを探さなくてはならない。  俺はカードを握りしめたまま、辺りを見回す。  鳴り響く警笛の中、蛍光ピンクやオレンジ等、色とりどりの髪と瞳をした級友達が、キョトンと空を見上げている。  この世界は、こんなにもド派手で目に痛い色で溢れていたっけ? と、俺は首を傾げつつ、カードを握りしめ走り出す。  俺の求めるモノは、此処にはない。  訳の分からない焦燥感に駆られ、高校から飛び出した。  すると、近くの商店街のおじさんおばさん達が、皆警笛に困惑しながら、外に出ている。  ここは、髪も瞳も蛍光パープルが多いな……。  そんな感想を抱きつつ通り過ぎた時、ふとお店の姿見を見て、俺は固まった。  蛍光ピンクの髪にレモン色の瞳、……だと!?      
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