金のカップ

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金のカップ

青木彩乃は疲れ果てていた。 もう、この世の全てがどうでもいいと 感じるほど身も心も疲れていた。 学校では家が貧しいという理由だけで いじめられ、生活費を稼ぐために バイトに明け暮れる毎日。 雨が降ってきたので傘を差して歩くと、 程なくして土砂降りになった。 周りの音は何も聞こえず、 近くを通った車に泥水をかけられた。 おまけに、ローファーの中まで水が入ってきている。 彩乃はため息をつき、駆け足で家へと帰宅した。 この後は飲食店のバイトがある。 だから、早く準備をしないと。 なのに、身体が動かない。 薄暗い玄関で彩乃は座ったまま涙を流した。 だれか、助けて。 そう叫びたかった。 幼い頃、亡くなった父は言った。 虹のふもとには金のカップがあるのだと。 虹が地上に降りそのカップで水を飲んでいるうちに 虹のふもとに辿り着けばカップを 手にすることができる。 そのカップを手に入れられたら幸せになると。 だから彩乃もそのカップを 手にすることができるように頑張りなさい。 でも、もう疲れたよ、お父さん。 わたしは虹のふもとに向かって いつまで走り続ければいいの? 急に体にだるさを感じ彩乃は寝転がった。 もし、本当にそのカップがあるのだとしたら わたしの努力は報われるのかな。
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