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スカーフが釘で裂かれて尻餅をついてしまったせいで、泣き叫ぶ娘の声で起こされた私の視界には、寄り添う母の姿が確かに見えたわ。
そこでようやく、事実を知らされた。
娘だけじゃなく、一緒に働く同僚の皆さんに対しても、ずいぶんと高圧的だったとか?
仕事ができるせいで、俺が悔しい思いをするから、その罪滅ぼしをさせてやる。
そうおっしゃったんですって?
言った気もしますが、なんてもういい加減にしてくれないかしら。
同級生との再会がこんなタイミングなんて、互いに気分が悪いわね。
娘はもう、元に戻らないわ。
なんですか、ほっとした顔をして。
勘違いしないでください。
身体はちゃんとしているわ、甘い考えはもうおよしなさいよ。
早くいなくなればいいと、管を繋がれている姿なんか思い浮かべていたら、当てが外れて残念だったわね。
世の中は、あなたにばかり都合がよい、ぬるま湯じゃないから。ツケが回ってくる時が、必ずやってくるんだから。
退院までは数年かかるかもしれないと、先生から伝えられたわ。
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