濡れた傘。

　　　　　濡れた傘。

　　　　　私は愛について考えます。
　　　　愛とは何にを指すのか、私の身近にもあるものなのか、
　　　　あの人の心にも抱かれているものなのか、
　　　　そんな途方もない待ちぼうけのような考え事を
　　　　ついつい雨音の激しい日になんかに考えてしまうのです。
　　　　きっと、多くの人は笑い飛ばす事でしょう。
　　　　暇人だなだとか、そんなもの考えていて何になると、
　　　　それでも私は絶え間なく其れを考えていたいのです
　　　　せめてこんな雨の日にくらいは。

　　　　　ある人は言います、愛とは育てゆくものだと。
　　　　ある人は言います、愛とは与えるものだと。
　　　　どれもこれも正解な気もすれば、
　　　　腑に落ちない箇所もなぜだか答えも知らぬ私にも浮びます。

　　　　　そんな時にふと聞いた歌は、
　　　　モタっとした音と深みの多い声で恰も簡単に私に知らせてくれました。
　　　　「お前の中で雨が降れば、ぼくは傘を閉じて濡れてゆけるかな」
　　　　私にはこれが答えな気がしました、
　　　　ハッキリとした説明なんかはできないけれど、
　　　　これが愛だという事は、私にもわかる気がします。

　　　　不器用かもしれないけれど、それでも誰かに寄り添いたいと想おうとする事は
　　　　私には一つの愛の形に映るのです。