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(「赤い糸」の2人のその後のお話です。)
何もかも、この強い日差しのせいなんだ!
あの時は周りが気にならなかったが、今思うと顔から火が出そうな体育祭。
隼斗と一緒に居ると冷やかされたりしたが、嫌がる俺の姿を見て隼斗の威嚇が思った以上の効果を発揮し、あれから3ヶ月ーー今はもう誰も何かを言ってくる事はない。
赤いハチマキを運命の赤い糸とか言うのが紛らわしかったんだ!
結局の所、先輩と後輩。隼斗と俺の関係は何も変わらない。
まぁ、少しだけリレーで真剣に走る隼斗をカッコいいと思ったり、違う階の俺の所までわざわざ来る所が可愛い奴だと思ったりしなくもない。
少しだけ、俺の中で隼斗の立ち位置が変わったかなと言う感じかな。ほんの少しだけな!!
隼斗も今までと何も変わらない。
「今日も俺の好きなゆいちゃんだ」
「はいはい、どーもどーも」
隼斗の『好き』は一日一回以上出るので、もはや合言葉だ。
ただ、ちょっとスキンシップが増えた感はある……いや、ちょっとじゃないな、俺今羽交締めにされてるからな!!
「これ見て誰も何も言わないし、助けないのどうかと思うんだが……。いい加減離れろよ!梅雨も明けて夏本番なのに暑苦しい!!」
「だって、ゆいちゃん、この前の体育祭から注目浴びてるし、俺のってアピールしとかないと……」
「誰のせいで注目浴びて、誰のせいで現在進行形なのかって話なんだけど?!隼斗が居なければ俺は目立たない地味人間ですけど?!」
「そんな事ないよ!ゆいちゃんは自分を分かってないからなぁ」
「大体、俺のって何だよ。俺は物じゃ無いし、隼斗に所有された覚えもないんだけど?」
「運命の赤い糸を受け入れてくれたんじゃないの?ゆいちゃんが意識してくれるまで待つつもりでは居たけど、ゆいちゃんの中では、何も変わらないんだな……」
ハチマキは隼斗が勝手に腕に巻いただけじゃん。意識って何をだ?何も変わらないって……変わる訳ないだろ!
何?運命の赤い糸を受け入れたって男同士で付き合うの?冷やかしあったけど、睨んで潰してたの、冗談言うなって事だろ?違うのか?
俺は隼斗に何をどう言えば良いのか分からず混乱する。
そんな俺を見て少し寂しそうに笑うと隼斗は俺に背を向けて歩いて行った。
その日から、隼斗は俺の所に来なくなった。
派手な一年生が三年生の階に来るのが日課になっていたのが、パタリと来なくなり、俺だけじゃなく、他の人らも違和感があるらしい。
「悠一、あの派手な一年もう来ないの?存在感あり過ぎて、なんか居ないと不思議な感じする」
「知らねぇよ。もう来ないんじゃないの?」
適当に返事する。
いつも休憩時間にベッタリくっついて来るので、居ないと休憩時間が長く感じる。
ジュースでも買いに行くかと、一階まで下りると、一年生の賑やかな声が聞こえた。
廊下で固まってる一年生を見つけると、その中に真っ赤な頭が他より飛び出て目に入った。
俺と話してるよりも楽しそうではあるが、どこか意地が悪い様な、柔らかさが無くなっている様な表情の隼斗。
周りが楽しそうに笑ってるけど、隼斗の目は笑ってない様に見える。
でも、一年同士でつるむのが一番だよな。俺は来年卒業して居なくなるんだし……。
隼斗に見付からない様に自販機がある方へ向かう。
ジュースを買ったが、3年の教室に戻りたくないので、そのまま中庭の木陰にあるベンチに横になる。
「暑い……」
木陰でも葉と葉の隙間だったり、枝の長さが足りなかったりで、所々夏の強い日差しが降り掛かる。
暑いが起きるのも面倒で、もういいやとそのまま我慢して横になったまま目を閉じる。
どれ位経ったか分からないが、ふと日差しにジリジリ焼かれている部分が涼しくなり、目を開ける。
と、目の前に隼斗の顔があり、ビックリする。
日差しが当たる所に手を当てて影を作ってくれてたらしい。
そして、俺は隼斗に膝枕をされていた。
「おはよー」
一方的に離れたクセに何もなかった様に普通に挨拶された。
座ってる分、木陰から出てしまい、手は俺に掛かる日差しの影となり、隼斗はほぼ全身強い日差しを受けていた。
鼻の頭に少し汗をかいていたが、気にせず俺に笑い掛けている。
あぁ、もう!!
隼斗の言う意識って言う物が何か分からないけど、愛おしい気持ちと言うのはこの事だろうと思った。
「隼斗」
俺は腕を伸ばして隼斗を抱きしめた。
「ゆいちゃん?!」
「……暑い……。お前、熱中症になるだろ?!ほら、ジュース飲め!」
「俺、暑さに強いから大丈夫!ゆいちゃん、寝れた?
……あれ?影にしてたはずなのに、顔赤すぎない?大丈夫?」
「影に居ても暑いものは暑いんだよ!日差し強すぎな!もう外で寝るのは無理だな、うん!」
隼斗の顔が見れなくて、早口に言ってその場を去ろうとする。
「あ、ゆいちゃん待って!一緒に行こう」
腕を掴まれ、そのまま手を繋がれる。
俺の顔は更に赤くなった気がする。
「ゆいちゃん、可愛い。今日は日差しが強すぎたね」
その言い方に何か気付かれたかもしれないと思ったが
「そうだ!今日は日差しが強すぎるんだ!」
茹でダコの様な顔を隠す様に俯きながら、手も汗ばんで気持ち悪いだろうと思いながらも繋いだ手は離せず、そのまま一緒に歩いて行く。
一度愛おしいと思ったら、その気持ちは消える物ではない。
でも、俺はまだこの顔の熱は夏の日差しのせいにしておきたいと思った。
〜END〜
今回のお題は難しくてまとめるの大変でしたが、なんとか書き切れて良かったです。
お読み頂き、ありがとうございました😊
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