出会い

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午後一、会議室には緊張感が漂っていた。経営企画部と営業部の社員たちが集まり、大型プロジェクトのキックオフミーティングが始まる。プロジェクトリーダーとして前に立つ佐藤真一は、スクリーンに映し出された資料を指し示しながらプレゼンテーションを開始した。 「本プロジェクトの目的は、市場シェアの拡大と新規顧客の獲得です。そのためには、経営企画部と営業部が一丸となって取り組む必要があります。」佐藤の冷静で明瞭な声が響き渡るが、その言葉の裏にどこか軽いニュアンスが感じられる。 プレゼンテーションが進む中、 「質問です。この計画において、営業部が果たすべき具体的な役割についてもう少し詳しく教えていただけますか?」高橋は鋭い眼差しで尋ねた。 佐藤は一瞬、驚いたような表情を浮かべたが、すぐに冷静に答えた。「営業部の皆さんには、既存顧客との関係強化と新規顧客の開拓をお願いしたいと考えています。特に、高橋さんのような優秀な方々が率先して動いてくださることを期待しています。」 佐藤はなにやら満足げにはにかみ、プレゼンテーションは終了した。会議が終わると、高橋は自分の方針をまとめて話し始めた。「私たち経営企画部は、まず市場分析を徹底的に行い、ターゲット顧客を明確にします。その上で、マーケティング戦略を立案し、効果的なアプローチを取るつもりです。」 佐藤は高橋の方針を聞きながら、一つの点について指摘する。「高橋さん、確かに市場分析は重要ですが、実際の現場でのフィードバックをもっと重視すべきだと思います。データだけでは見えない顧客の声もありますから。」 高橋はその指摘に一瞬戸惑ったが、すぐに冷静に返答した。「そうですね、佐藤さん。現場のフィードバックを取り入れることも忘れずに進めていきます。ご指摘ありがとうございます。」 佐藤は軽く微笑みながら、「はい。お互いに補完し合って、より良い結果を出しましょう。」と言った。 高橋は佐藤の言葉に納得しながらも、以前見た彼の軽薄な振る舞いとは対照的な真剣な仕事ぶりに少し驚きと興味を覚えた。
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