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そうこうしているうちに、いつのまにか村の人たちが周りにたくさん集まっていた。どうしよう、すごく注目されちゃってる。
「ちょっと通してね」
家から出てきたお母さんが人をかきわけ、近づいてきた。
「フェリシア、何の騒ぎなの?」
「お母さん」
お母さんが心配そうに私を見つめる。
そのとき、私はお母さんがいつも昔を懐かしみ、嘆いていることを思い出した。
ティーパーティー、豪華で綺麗なドレス、王宮暮らし。私には夢物語だけど、お母さんお父さんにとっては現実で、戻りたくて仕方のない過去。
昔ほどとはいかなくても、もし私が立派な白魔術師になったら、きっとお母さんたちにも今より良い暮らしをさせてあげられる。
町の白魔術師でもそこそこお金持ちが多いという話だから、王宮お抱えの白魔術師はたくさんお金がもらえるはず。そうしたら、お母さんたちも喜んでくれるよね。
「お母さん、私、白魔術師になる」
「何を言ってるの」
私が魔術を使えないと知っているお母さんは、呆気に取られたような顔をしている。
「彼女には白魔術の才がある。僕が保証します」
オーウェンさまが冷めた笑みを浮かべる。
ずっとつまらなそうにしてるのに、ここまで私を推薦してくれるのはどうしてなんだろう。
オーウェンさまの買い被りじゃなく、本当に私に魔術の才があれば良いなぁ。でも私よりも魔術に長けていそうなのは、オーウェンさまに思えるんだけどな。
こうして、私は王宮に白魔術師として迎えられた。
魔術の才能が開花しますようにと祈り続けて、もう八年。結局何も目覚めないまま、私はエセ魔術師として奮闘していた。
私の才を見込んでくださったオーウェンさまは、どう思っていらっしゃるのだろう。気にはなりつつも、もちろん聞けない。
オーウェンさまの魔法の才能が伸びているのか、消滅してしまったのかは、分からなかった。オーウェンさまが私の前で魔法を使って見せてくださったのは、初めてお会いしたあの時の一度だけだったから。
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