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3、悪霊退治
どうか、何も出ませんように。
護符を額に貼り付け、水色のアミュレットを手首と足首に幾十も巻きつけ、私は心の中で何度も祈る。
ハラハラしながら、初めて足を踏み入れた塔の階段を一歩一歩上る。薄暗い塔の中は埃っぽくて、いかにも呪われそう。
ここは、王宮の離れにある塔。
本来なら、王族の方のハネムーン期間に使用される予定で建てられたものらしい。けれど、王族の方やお世話をする人たちが塔で怪我をされたり、体調を崩されたりといったことがあまりにも多かったみたい。悪霊が出ると噂がたち、もう数百年も使われていないとか。
メイドさんたちが一年に一度最低限の掃除をする以外は、誰も立ち入らなくなった塔。あまり入りたくはない塔に一人で来ることになった理由は、悪霊退治をおおせつかったから。
それというのも、他国のお姫さまとのご結婚がお決まりになった第二王子さまが離宮の塔を使われたいとのこと。ご結婚はとても喜ばしいし、全力で祝福させて頂きたい。
でも、本物の魔術師ならともかく、エセ魔術師の私が悪霊退治なんて出来るはずもない。と言ったら偽物だとバレちゃうので、二つ返事で受けちゃった。
うぅ……、呪い殺されたらどうしよう。
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