3、悪霊退治

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 何事もないまま、塔の最上階の十三階まで辿り着く。  結局どの部屋でも霊と遭遇することもなく、嫌な気配さえも感じなかった。  なにもなければない方がいいのだけど、悪霊退治を依頼された手前、成果をあげなければ帰れないよね。  霊に遭遇したくないけど、遭わなければいけない。複雑な気持ちを抱えつつ、最後のドアを開ける。  最上階に一つだけある部屋は、王族の方が使っていた寝室。ギギギィと不気味な音がして、ゆっくりとドアが開いていく。  私には十分過ぎるけど、王族の方が使われるにしては想像よりもこじんまりとした部屋。その中には、必要最低限の家具だけが置かれていた。  天蓋付きの大きな赤いベッド、二人用の小さなテーブルに椅子、大きな窓と木製の小さなチェストがそれぞれ二つ。一年に一度しか人が入らないから、やっぱりここも埃っぽいし、家具もだいぶ古びている。  数百年前の部屋がそのまま残っているみたい。 『何度来ても無駄です。私は、この方と結婚しますから』  部屋を見渡していたら、どこかから女性の声が響く。キョロキョロと辺りを見渡しても、誰もいない。  もしかして、霊――? ぶるりと身体を震わせ、アミュレットを握りしめる。そうだ、護符……! けれど、次の瞬間。  額に貼っていた護符は破れ、腕にジャラジャラとつけていたアミュレットは全て砕け散ってしまった。 「ひええ、そんな……」 『隣国の王子の元にはいきません。帰ってください』  アミュレットを拾い集めようと身を屈めた私の耳に、また女性の声が届く。もしかして、誰かに害を加えようというよりも、ここから出ていってほしがってるのかな。 「私はあなたの邪魔をしにきたわけではありません。話を――きゃあっ」  とにかくこの方の話を聞かないと。姿の見えない幽霊に話しかけるけど、突然身体が重くなる。立っていられなくなり、うずくまってしまう。 『どうして分かってくださらないのですか。愛する方と一緒にいたいだけなのに』  女性の悲痛な叫び声が聞こえる。詳しい事情は分からない。けれど、彼女の声を聞いていたら、なんだか私まで胸が苦しくなってきた。 「待ってくださ、私は……」  私はあなたに危害を加えるつもりはないと伝えたいのに。だんだんと意識が遠のいていく。
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