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「出来るわけないよね、そもそも魔術が使えないんだから」
オーウェンさまは横目で私を見て、呆れたように言った。
「どうして、それを」
ポロリと言葉が出てしまった自分の口を両手でおさえる。
「フェリシアの代わりに、僕が黒魔術で依頼を解決してたから」
「オーウェンさまが!?」
びっくりして、つい声が大きくなってしまう。
そういえば、なにかが変だとはずっと思っていた。
オーウェンさまは時々どこかに消えたかと思えば、ふっと現れ、依頼で頼まれたものを持っている。パーティーに潜り込んだ私の姿が突然みなさまの視界から消えたこともあった。
「今までの不思議な現象は、全部オーウェンさまだったのですね。黒魔術も使われるなんて存じ上げなかったです」
私はとんでもなく運が良くて、自分の機転と努力でピンチを潜り抜けてきたと思っていた。でも、そうじゃなかったんだ。私は今まで、知らないところでどれだけオーウェンさまに助けられてきたんだろう。
「黒魔法はともなく、黒魔術使いなんて不気味以外の何者でもないからね」
だから言わなかった、とオーウェンさまは続ける。
そして、私からわずかに距離をとった。普段はほとんど表情の変わらないオーウェンさまがどこか寂しそうに見える。
「オーウェンさま」
オーウェンさまに一歩近づく。
「助けてくださって、ありがとうございます。今までも、先ほども」
胸の前で腕を組んで、オーウェンさまを見上げる。感謝こそしても、不気味だなんて思うはずがない。
「オーウェンさまの黒魔法は、やっぱりすごいですね」
「初めて会った時もそう言ってくれたね」
オーウェンさまがじっと私を見つめる。なんだかドキドキして、目を合わせられない。
「どうして私を助けてくださっていたのですか?」
「まだ分からない?」
オーウェンさまからの熱い視線を感じる。もしかしてオーウェンさまは――いえ、さすがにそれは自惚れが過ぎるというものよね。まさかオーウェンさまが私を、だなんて。
居心地が悪くなって、床とオーウェンさまを交互に見てしまう。
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