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2、第三王子様との出会い
藁で出来た屋根、荒土で固めた壁。食事をするところも寝る場所も全て一つになった大きな空間で、私たちは家族四人で暮らしていた。
「ただいまぁ!」
ドアが壊れそうなくらいの勢いで、妹のエリザが勢い良く飛び込んでくる。ピンク色の髪を高い位置で二つにくくった九歳の妹は、私と同じようにツギハギだらけのエプロンドレスを着ていた。
「お母さん、破れちゃった」
エリザはブラウンの瞳をイタズラっぽく細め、てへと舌を出す。
「またなの?」
床に座っていたお母さんは糸を紡いでいた手を止め、呆れたように言う。
「ごめんなさい」
「縫っておくから、貸しなさい」
エリザは小さなチェストからドレスを取り出す。エリザが取り出したオレンジのドレスも、破れた箇所にたくさん当て布がされている。
うちには新しい服をたくさん買えるほどお金はないのに、エリザが次から次へと破ってくるから、どれもボロボロだった。エリザに貸していた私のドレスまで、ツギハギだらけになっている。
「友達待たせてるから、行ってくるね」
エリザはあわただしく着替えて、またバタバタと出ていった。
「あ、こら、待ちなさい」
お母さんが声をかけても、エリザはもうとっくに家の外。
「もう、仕方のない子ね」
お母さんはため息をついて、エリザが脱ぎ散らかしたドレスを拾う。近くに置いてあった布を見繕い、破れた箇所に当て、縫い始める。
「お母さん、何か手伝うことある?」
読んでいた小説を閉じて、床の上に置く。
「あなたも遊んできていいのよ」
「今日はいいの。お母さんのお手伝いがしたい」
おてんばな妹は、村の男の子たちと駆け回ったり、イタズラをしたりする方が好きみたい。だけど、私はお母さんの手伝いでお料理をしたり、お裁縫をする方が好き。
それに、いつも大変そうなお母さんを少しでも助けたかった。お母さんは家のことをするかたわら、糸を紡ぎ、布を織っている。お父さんは家の近くの畑で農作業をしたり、お母さんの織った布を町に売りに行ったりしていた。
私は家のお手伝いをしているし、エリザは時々畑の方を遊び半分で手伝っていた。
私はけっこう楽しんでるんだけど、お父さんとお母さんは今の暮らしに不満があるみたい。
「本当なら、あなたたちは今頃綺麗なドレスを着て、ティーパーティーを楽しんでいたはずなのに」
お母さんは当て布をしながら、またため息をつく。
「フェリシア、あなたは私たちのような失敗をしないでね」
もう何度言われたか分からない忠告を、また今日も受ける。
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