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黒のロビー
「いらっしゃいませ!! お待ちしておりました!!」
「ひぇっ!」
黒ずくめの列が私達に向けて一斉に頭を下げながら、ドスの利いた歓迎(?)の挨拶を発してきたので、びっくりして思わず麗奈の腕に抱きついた。
「ここ、ミステリーツアーの黒いホテルで合ってますよね~?」
麗奈が私の代わりにたずねると、
「はい。当ホテルがミステリーツアー指定ホテルでございます。ようこそいらっしゃいました。ささ、お暑いですからどうぞ中へ……」
「あ、はい……」
黒い着物に金の刺繍が眩しい和服美人が、にこやかに私達を招き入れてくれた。きっちりとまとめた黒髪が美しい、凛とした彼女の佇まいはどことなく極の……。
こうして、組織の大幹部のようなお出迎えの中、私達はロビーへと入って行った。
このホテルでは、チェックインの手続きをフロントでは無くロビーのソファーで行う。ウェルカムドリンクの黒酢ソーダを味わいながら、受付用紙に筆を走らせる。
見上げれば、黒い大理石の壁に炭色の天井。予想通り高級感溢れるインテリア。そう、このツアーがハズレだと決めつけるのはまだ早い。
「改めまして、Crni Hotelへようこそ。私、支配人の黒崎と申します」
物腰柔らかで漫画の執事キャラのようにスマートな印象の彼。黒いスーツにシャープな黒縁メガネ、黒の革手袋と黒一色のコーディネートはさすがだ。
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