黒のロビー

2/3

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
「当ホテルの印象はいかがですか?」 「❝外にいる人がサングラスしてて怖かった❞って優子(この人)が言ってました~」 「ちょっ、余計な事を!」 この口の軽さが彼女の悪い所だ。支配人さんがインテリ893という可能性もゼロでは無いから、あまり刺激しちゃダメなのに。 「申し訳ございません。なにぶんこの強い陽射しでございますから、眼を保護する為、屋外にてサングラスを着用させて頂いております。何卒、ご理解とご協力をお願い致します」 「ほら、こう言ってるんだし、許してあげたら~? 優子ってお店の人に厳しいタイプなの? もっと優しくならないとさ~。ゴメンなさいね、この子気持ちの余裕が無くて~」 「そこまでは言ってないんだけど」 なぜか私がモンスタークレーマー扱いされてしまった。 「何かご不明な点やお困り事がございましたら、何なりとお申し付け下さい」 「そうそう、セルニ・ホーテルって変わった名前ですね。何て意味なんですか?」 「よくぞ聞いて下さいました。異国の言葉で❝黒のホテル❞という意味でございます」 聞きなれない外国語で命名するくらいだから、黒へのこだわりの強さがうかがえる。 「へぇ~、何語なんだろ~」 「アチア語でございます」 「ダジャレじゃん」 聞かなければよかったかも。なにこのネット翻訳でチャチャッと探して名付けたようなテキトー感。実はそんなにこだわっていないのかも。 ──にゃ~お!── ソファーの裏から猫の鳴き声が聞こえたので振り返ると、黒猫がいた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加