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「当ホテルの印象はいかがですか?」
「❝外にいる人がサングラスしてて怖かった❞って優子が言ってました~」
「ちょっ、余計な事を!」
この口の軽さが彼女の悪い所だ。支配人さんがインテリ893という可能性もゼロでは無いから、あまり刺激しちゃダメなのに。
「申し訳ございません。なにぶんこの強い陽射しでございますから、眼を保護する為、屋外にてサングラスを着用させて頂いております。何卒、ご理解とご協力をお願い致します」
「ほら、こう言ってるんだし、許してあげたら~? 優子ってお店の人に厳しいタイプなの? もっと優しくならないとさ~。ゴメンなさいね、この子気持ちの余裕が無くて~」
「そこまでは言ってないんだけど」
なぜか私がモンスタークレーマー扱いされてしまった。
「何かご不明な点やお困り事がございましたら、何なりとお申し付け下さい」
「そうそう、セルニ・ホーテルって変わった名前ですね。何て意味なんですか?」
「よくぞ聞いて下さいました。異国の言葉で❝黒のホテル❞という意味でございます」
聞きなれない外国語で命名するくらいだから、黒へのこだわりの強さがうかがえる。
「へぇ~、何語なんだろ~」
「クロアチア語でございます」
「ダジャレじゃん」
聞かなければよかったかも。なにこのネット翻訳でチャチャッと探して名付けたようなテキトー感。実はそんなにこだわっていないのかも。
──にゃ~お!──
ソファーの裏から猫の鳴き声が聞こえたので振り返ると、黒猫がいた。
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