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黒の客室
今日泊まるのは、黒を基調としたモノトーンとオーシャンビューが美しい部屋だ。
壁面や天井を黒でまとめつつ、グレーのラグや折り返したベッドのシーツに白を用いて暗くなり過ぎないように整えているのが感じられた。備え付けの液晶テレビやオーディオも黒。もっとも、❝黒物家電❞という言葉があるように、これは市販モデルなのだけれど。他に黒いアイテムは無いかな。
「あ、コーヒーミルがある!」
テーブルの上には黒いコーヒーミルと豆の入った袋が置いてあり、❝この島で収穫したコーヒー豆です。癒しのひと時をお楽しみ下さい❞とのメモが添えてあった。
早速豆を入れて、ハンドルを廻す。豆がひかれて砕ける音を聞くのは、ストレス解消になって心地いい。
まず1杯目はブラックで。
「ああ、いい香り……」
苦味が少なくて美味しい。水出しだったらゴクゴクいけそうだ。
続けての2杯目は、ミルクを入れて。
でも、テーブルの上にあるのはガムシロップだけで、ミルクは置いていなかった。黒へのこだわりだからなのか。
バッグの中を漁ると、前にコンビニで貰って使いそびれていたミルクのポーションを見つけた。
「いいの~? そんな事したらルール違反で捕まったりして~」
「捕まるって何よ」
黒をベージュにしたくらいで捕まってはたまらない。彼女の忠告も聞かずにミルクを垂らすと、
──ジリリリリリーーーーー!!──
「キャーー!!」
けたたましい音量で警報ベルが鳴った。まさか本当に取り締まりが!?
「あ、ごめ~ん。ウチの目覚まし時計が間違って鳴っちった」
「そんな爆音のやつ持ってきちゃダメでしょ!」
そんなてへぺろしたってダメだ。だったら私が起こしてあげるのにね。
──ドタドタドタドタ……──
「何この音?」
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