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「ニャンとくん。ちょっとニャンとくんの名前はかっこ仮で。あとで、きちんと一緒に考えましょう」
パチンと両手を合わせてユリアナは言うのだが、そこで一つ疑問が浮かんだ。
「あれ? じゃあ、魔王はニャンとくんのことをなんて呼んでいたの?」
「おいって呼ばれているニャ」
それは名前ではない。
そんなやりとりをしている二人に、冷たい視線が向けられる。もちろん、その視線の主は魔王である。
「お前たち。私を無視して勝手に話を続けるな」
そこで、読んでいた本をパタリと音を立てて閉じた。
「それで、聖女は私に何をしてくれる、と?」
ユリアナとニャンとくんが仲よく話をしていたからか、魔王フライムートは少しいじけてしまったらしい。ユリアナにはそう見えた。
ユリアナはその場を誤魔化すように、また両手をパチンと音を立てて合わせる。
「そうそう。あなたのね、怪我の具合をみにきたの。回復魔法が必要であれば、と思って。でも、よくよく考えてみたら、私の聖魔法を魔王にかけてもいいのかしら、とも思えてきて。さて、どうしようとか、そう悩んでみたわけで……」
「魔王と呼ばれているが、聖属性に弱いわけではない」
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