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ユリアナは慌てて立ち上がった。
「ごめんなさい。お詫びと言ってとはなんですが。まずは回復魔法をかけさせてもらいます」
先ほどのフライムートのふらつき具合を見ても、身体の調子はあまりよくはないのだろう。一日の大半をこのベッドの上で過ごしているに違いない。これでは日常の生活も不便なはず。
ユリアナはベッドにいるフライムートへと近づくと、両方の手のひらを彼に向けた。やわらかなオレンジ色の光がフライムートを包む。
「ほぅ。これが聖女の回復魔法か」
フライムートは満足げに呟く。
「悪くはないな」
オレンジ色の光に包まれながら、恍惚な笑みをフライムートは浮かべていた。
「よくなりましたか?」
ユリアナは恐る恐る尋ねた。
フライムートはベッドから降り、ユリアナの前に立った。改めて向かい合うと、彼は背が高い。ユリアナはフライムートを見上げる形になってしまう。
「ああ、おかげさまで立ち上がれるようになった。礼を言う、ありがとう」
フライムートの『やられ損』を作り出してしまった聖女であるにもかかわらず、そうやってきちんと御礼を口にしてくれるところは、律儀な男なのだろう。
「でしたら」
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