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「どちらさまですか?」
気を抜けば震えそうになる声で、ユリアナが尋ねた。
「それはこっちのセリフだニャ。せっかく戦いが終わって、ゆっくり休めると思ったのに。誰が来たのかニャ?」
「あ、私、聖女ユリアナです」
(あ、自分で言っちゃったよ、聖女って……)
ユリアナは後悔するが、もう遅い。
「ニャンと」
(なんとがニャンと? ちょっとかわいいかも)
ユリアナがいる場所は魔王城だというのに、なぜか心が和む。
「また、フライムート様を倒しに来たのかニャ」
やっと、そのニャンとくんがぼんやりと姿を現した。
しかし、人間ではなかった。どこからどう見ても猫。白猫なのだが、四本の足で立ち、しっかりとユリアナを見ている。白猫なのに、ところどころ黒のぶち模様があり、目の周りだけハート形にもなっている。
「違います、違います」
ユリアナは顔の前で右手をふりふりと振った。
「魔王に、会いに来ただけです」
「ニャンと」
ニャンとくんは猫から人の姿へと変えた。十歳くらいの男の子だ。
「会いに来たってどういうことかニャ?」
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