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人型になっても語尾はニャのままだった。でも男の子がそう言うと、ちょっと可愛いという気持ちになるから不思議だった。
「あの。具合はどうかな、って。その……クリスが手加減しなかったから。ちょっと気になってて……」
ユリアナのその気持ちは偽りではない。
『倒された』というあの表現では、どのくらいの怪我の具合を指すのかがさっぱりとわからない。死んではいないと思うのだが、軽症か、重症か、はたまた重体か。
ニャンとくんは、顎に右手を当てながら、値踏みするかのようにユリアナの顔を眺めてきた。さらにユリアナの周りをぐるぐると歩き始める。何かの探偵が謎解きをし始めるような動きにも見えなくはない。
「嘘をついているようには見えないニャ。どういう風の吹き回しだニャ? 聖女は勇者と結婚するんじゃなかったのかニャ? 世の中、その噂で盛り上がっているはずだニャ」
こんな次元の違う魔王城にまで噂は届いていたようだ。噂とは恐ろしい。
「それは噂ですよね」
ユリアナはニッコリと微笑んだ。それは、自信に満ちた笑みでもある。
「私、そのプロポーズを断りましたから」
「ニャンと」
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