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☆☆☆ 「なんだ。私の出番は終わったのではないか?」  かつて魔王と呼ばれていたフライムートが、ベッドの上で本から視線をうつさずにそう言った。  その姿は、勇者御一行が魔王と対峙したときと同じ、黒い髪の黒い瞳。あのときと違うのは、長い髪を一つの三つ編みにしているところだろう。 (あ、かわいいかも)  三つ編みにしている魔王の姿は、ユリアナの心をくすぐった。読書のためには、その長い髪が邪魔なのだろう。 「ええと。具合はどうかな、と思って。お見舞いに来てみました」  両手をお尻の後ろで組んで、えへっと笑いながら、ユリアナは答えた。 「見舞いだと?」  やっとフライムートが読んでいた本から顔をあげ、ユリアナに視線をうつした。 「その割には手ぶらじゃないか」  見舞いというのが、今考えた口実であるということがバレてしまったようだ。 (正直に、勇者との結婚が嫌だから逃げてきた、って言ったほうがよかったのかな)  そう思っていたら、どうやらユリアナの顔にその考えが出ていたらしい。  フライムートは不審者を見るかのような鋭い視線をユリアナに向けた。いや、不審者ではなく侵入者である。
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