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「フライムート様。聖女ユリアナは手ぶらではありますが、その回復魔法でフライムート様のお身体を癒したいということですニャ」
(さすがだよ、ニャンとくん。ナイスアシスト!)
見た目は十歳の男の子だけど、中身は何歳? とユリアナの前世の記憶がささやいた。
「はい、ニャンとくんのおっしゃる通りです。私の回復魔法でその怪我を治してさしあげたいな、と思って参りました」
ユリアナはビシっと右手を額の前で斜め四十五度に傾けた。つまりのところ、優秀なニャンとくんに便乗したのだ。
「ニャンとくんとは、僕のことかニャ?」
そう聞かれ(しまった)とユリアナは思った。
心の中で勝手に名前をつけて呼んでいたのに、それが思わず口に出てしまったようだ。
「あ。だって、お名前聞くのを忘れていたから」
言い訳するかのように、ではなく、本当に言い訳をするユリアナだが、ニャンとくんは嬉しそうに笑っている。嬉しそうに笑っていないのは魔王だけである。
「僕には名前がないニャ。だから、その名前でいいニャ」
やっぱりニャンとくんは嬉しそうだ。
でも、名前がないならもう少しきちんとした名前をつけてあげたいような気もする。
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