水面から見上げる雨上がり

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 雨雲が空を覆っている。今にも雨が降りそうな気配だ。もし雨でも降れば大変なことになる。 「ハルナ急ごう」 「うん、マユ」  ハルナが急に私のスマホに連絡を入れてきた。 「今、どこにいるの?」 「今? 家に帰ってる途中だよ。だからもう少しで家に着くところ……」 「そうなの? 実は大変なことが起きちゃって」 「どうしたの?」  ハルナの話では私の家のすぐ近くの公園の細い脇道を入ったところに今は干からびた貯水池がある。貯水池といっても小さく以前は猫の額のような畑があったらしくそれに使ったのだろう。今は畑もなく放置されて雑草が生い茂っている。また木々で囲まれていて暗く悪戯好きの子供でもあまり近づかない。念のため危ないということでその貯水池には有刺鉄線が張り巡らされていた。しかしあまりにも古く所々錆びて切れていたりする。  ハルナはそこで子猫らしき鳴き声を聞いたので、意を決してボロボロの有刺鉄線の切れ目から貯水池に侵入し覗き込んだらしい。すると子猫が落ちていて上がれずに酷く怯え鳴いているとのことだった。まして干からびているといっても底は梅雨の時期でぬかるんで泥だらけで息も絶え絶えに見えたそうだ。  私は急いでハルナの元に駆けつけた。
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