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確かに子猫の鳴き声がする。慎重に有刺鉄線の切れたところから私たちは貯水池に侵入した。しかし深い。これでは子猫はもちろん私たちでも落ちれば簡単には上がることが出来そうにない。それに貯水池はコンクリートで塗り固められひび割れた隙間から水が滲み出ている。
「誰か男の人を呼んだ方がいいんじゃない?」
私はハルナに聞いた。
「そうなんだけど他に繋がらなくて」
ハルナは気が動転している。
遠くでゴロゴロと空が鳴っている。雨雲も分厚くなり、いかにも雨が降りそうな気配だ。風も出てきた。
「これ、急いだ方がいいよね。私降りてみるから……」
私はかまわずそのまま飛び降りた。運動神経は私の方がハルナよりある。そして何より猫が大好きな私はこのまま放置することは出来なかった。雨がポツポツと降り始めた。
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