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ぬかるんだ底は確かに足を取られる。まだ人くらいになると容易だがこれが子猫だと生死に係わる問題だ。足を取られながらも子猫を追いかける。いきなり人が飛び降りてきたせいでぬかるみの中、必死に逃げようとする子猫。ハルナは上から心配そうに見下ろしている。
その時、ポツポツと降り出していた雨が急に強くなり出した。ゲリラ豪雨と見まがうほどだ。私はかまわず狭い貯水池を這うようにして逃げ惑う子猫を捕獲した。暴れる子猫。暴れる度に服は泥だらけになったが悠長なことも言ってられない。私はなんとかハルナのいる方に手を伸ばし子猫を預けようとした。ハルナも手を伸ばしている。
「もうちょっと……ハルナもっと手を伸ばして……」
「マユ……」
なんとかハルナにしっかりと受け渡すことが出来た。ハルナは子猫を抱えている。雨はさらに強くなり見上げるのも困難だ。気付けは狭い貯水池は私の踝辺りまで浸かっていた。
「ハルナ……何かないかな? ロープみたいなものでも……」
返事がない。あれっ? と私は思った。
「ハルナァァ……ハルナァァ……」
呼んでもなんの返事もない。雨足は一段と強くなる。そして足元に違和感を感じる。
──なんだか沈んでいってない?──
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