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私の身体がゆっくりと沈んでいくのが分かる。元々緩んでいた底の泥が雨の影響でさらにゆるくなり私の重みで沈んでいるのだ。先程まで容易に動いた足がまともに動かない。これではジャンプしようにも跳べない。まして雨足は強いままだ。踝までだった水位が今は膝辺りまで来ている。動くことが出来ない。
「ハルナァ……どうしたのぉぉ?」
まさか私を置いて子猫の泥を払うためにここを離れた? いくらなんでもそれはあんまりな考えだ。雨が強いからといってそのまま泥だらけの子猫を濡らしておくのは良くないの私でも分かる。ならば一言声を掛けて欲しかった。不安がよぎる。このまま雨が上がらないのではないか? もし雨が降り続ければ嵩が増し、緩くなった泥に私は沈み直ぐにでも頭まで浸かってしまう気がする。
──このままでは私、浸かってしまう。浸かってしまう……!? それは私にとって……──
「嫌ぁぁぁぁ……嫌ぁぁぁぁ……!!」
恐怖が頭を支配して来ている。どの恐怖よりも私が一番恐れる出来事……。心臓がいつもと違う動きをしている。呼吸が上手く出来ない。リズムがバラバラだ。吸っているのか吐いているのかも分からない。すでに私はパニックを起こしている。私が恐れる理由。この状態は……。
──私がまともでいられなくなるっっ!!──
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