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「んーと……あったあった。これ」
如月さんがあたしに自分のスマホの画面を向ける。
「これは?」
「高校生の時の俺」
画面の中には高校のときのだろうユニフォームを着て、勝利の瞬間だろうキャッチャーとタッチをしている如月さん。
そのタッチをしているグローブは今日見たグローブと同じものだった。
「エッ!こんな時から使ってるんですか!?」
「そう。なんか愛着ついちゃってさ。メンテナンスしながらずっと使ってんの」
「物持良すぎません!?」
「どうしても手放せなくてね。いい加減手放せればいいんだけど……」
そう言いながらスマホに付いてるキーホルダーに手を触れる。
「あれ、そのキーホルダー」
「そ。さっきのグローブをキーホルダーにしたやつ」
「これもじゃあ年季が?」
「うん。ガラケーのときからずっとついてるよ」
思い出のグローブなのかもしれない。
さっき「手放せたら」と口にしたときの如月さんは眉が下がっていて、なにかを思い出しているような気がした。
だからここで「新しくしないんですか?」なんてもちろん口にすることはできない。
如月さんの想いはそのグローブにたくさん詰まっているような気がしてしまったから。
その表情になんとも言えない気持ちになってしまって、その後のお酒の味はあんまりよく覚えてない。
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