2

5/8

85人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「んーと……あったあった。これ」 如月さんがあたしに自分のスマホの画面を向ける。 「これは?」 「高校生の時の俺」 画面の中には高校のときのだろうユニフォームを着て、勝利の瞬間だろうキャッチャーとタッチをしている如月さん。 そのタッチをしているグローブは今日見たグローブと同じものだった。 「エッ!こんな時から使ってるんですか!?」 「そう。なんか愛着ついちゃってさ。メンテナンスしながらずっと使ってんの」 「物持良すぎません!?」 「どうしても手放せなくてね。いい加減手放せればいいんだけど……」 そう言いながらスマホに付いてるキーホルダーに手を触れる。 「あれ、そのキーホルダー」 「そ。さっきのグローブをキーホルダーにしたやつ」 「これもじゃあ年季が?」 「うん。ガラケーのときからずっとついてるよ」 思い出のグローブなのかもしれない。 さっき「手放せたら」と口にしたときの如月さんは眉が下がっていて、なにかを思い出しているような気がした。 だからここで「新しくしないんですか?」なんてもちろん口にすることはできない。 如月さんの想いはそのグローブにたくさん詰まっているような気がしてしまったから。 その表情になんとも言えない気持ちになってしまって、その後のお酒の味はあんまりよく覚えてない。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加