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「……さん?澤上さん?」
「……ん?」
ぼんやりとする頭の中、目を開けるとすぐ近くに整った顔があって慌てて顔を上げる。
「えっ!?」
「止めても飲み続けるから焦ったよ。急にテーブルに突っ伏せるし、かと思ったら起きなくなるし」
「わぁ……とんだご迷惑を……」
如月さんのグローブの話から先が全く思い出せない。
なんだか覚えておきたくない表情な気がして、忘れたくてお酒を沢山飲んだのは覚えている。
でも飲んでも飲んでもさっきの如月さんの表情が忘れられ無くて飲み続けた。
そして今もまだ覚えている。どうせなら記憶をなくしたかった。
「なんかあったの?飲みたくなるようなこと」
「……あったというかずっとあるというか」
2年前に別れてから、あたしは何かというとお酒に逃げるようになった。
良くないとは思いつつもお酒は嫌な気持ちを水に流して、ふと考えてしまって落ち込んでもまた頑張ろうって思えたからあたしはお酒に逃げるしかなかった。
「俺でよかったら話聞くけど?」
「すっごく好きだった人に浮気をされて別れた。そんなよくある話ですよ」
「……そっか。浮気はいやだよなぁ……あ、ちょっと待って」
なにか次の言葉を言おうとしていた如月さんのスマホが音を鳴らした。
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