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「あっ、お会計……」
「俺が誘ったんだからいいよ」
財布を出そうとしたあたしの手を抑える。
「……でも」
「ここは先輩に甘えて。ね?」
「ご馳走様です」
「その代わりまたご飯行こうよ」
あたしの言葉に満足そうに笑う。
「はい、ぜひ」
「じゃあ気をつけてね。一応家に着いたら連絡してよ。心配だから」
「はは、わかりました。今日はありがとうございました」
お店から出るとちょうど来ていたタクシーに乗り込んで、如月さんに頭を下げると「じゃあ、また会社でね。月曜日は行く予定だよ」と手を振ってお見送りをしてくれる。
「そういえば毎週月曜日は練習がオフだって言ってたな」
前に同期が言ってたことを思い出す。
だから毎週月曜日だけはみんな出社をしてるらしい。
如月さんは練習の合間にも仕事をしているみたいだけど、外回りが基本であまり会社には来れないらしい。
「それにしても如月さん……彼女でもないあたしにスパダリすぎない?」
素であれなら彼女になる人はとっても幸せだろうけど、自分に好意のある相手が苦手なあたり彼女をつくることには積極的ではなさそうだ。
過去になにかがあったことは想像出来るけど、なにがあったかまではわからないし安易に聞くべきことでは無いと思うからこのまま知らないままでいい。
“家に着きました!今日は楽しかったです。ありがとうございました”
言われた通り家に着いてすぐに送った。
けれどもそれがすぐに既読になるわけでもなく、次の日の朝になっても既読にはなっていなかった。
「送ってって言ったのは如月さんなのになー」なんて思うけど、連絡が来て帰ることになったしきっと忙しいんだろうな。って気にはしなかった。
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