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「そんなんじゃないから。余計なお世話。ほら、仕事しといで」 「はいはい、泣きたくなったら電話しろよ」 ポンっとあたしの頭に手を触れて、エレベーターへと向かう。 「なんであたしが泣く前提よ……」 気にならないと言ったら嘘になる。 忘れたいと思ったあの表情は未だにあたしの脳裏に色濃く残ったままだ。 あのキーホルダーを触る如月さんの表情に感じたのは勘違いでは無かったんだと思い知る。 「どうしたの?神妙な顔して」 出勤時間になって隣にきた君塚さんが首を傾げる。 「あ、君塚さん。おはようございます。何も無いですよ」 気を取り直して、笑顔をつくる。 ここは受付だし、受付は会社の顔だし、油断しちゃダメだ。人に気づかれるなんてもってのほか。 「そういえば星那とご飯食べに行ったんだってー?」 「え、聞いたんですか?」 「うん。携帯壊れたって言って、あたしの彼氏が携帯関係の営業やってるから社用携帯から電話きてね。昨日会ったから聞いたの」 「……そうなんですね」 あまりどこかに行ったとか誰かと会ったとかそういう事を人に話すようなタイプではないと思ってたから少し驚いたけど、きっと君塚さんとか米内さんとか気心の知れた仲の人にはなんでも話す人なんだろうな。 「ちょっと安くなるからって連絡してくるのよー。でも、会う予定じゃない日に彼氏に会えたのは嬉しいからそれはそれで星那に感謝してるけどね」 嬉しそう笑うから君塚さんは本当に彼氏さんのことが好きなんだろうなと伝わってくる。
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