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「あっ、やべぇ。今日智史のとこ行かなきゃだった……!」
スマホにきた連絡をみて慌ててる米内さんの口にした名前に目頭が熱くなってくる。
なんでこんなにもすぐこの名前に反応してしまうんだろう。
「なんで泣きそうな顔してんの?」
あたしの顔を見た如月さんが怪訝な顔になる。
「えっ、どーした……っ、あ……?俺はもう行くから星那なんとかしたれ!」
「えっ、あいつ逃げた。逃げ足はや」
米内さんがあっという間に走り去っていく姿を笑いながらみる。
「どうかした?」
「ううん。なにもないですよ。如月さん一緒にご飯食べてってくれません?」
「おっ、澤上さんから誘われるのはじめてだね。是非」
如月さんがすぐ目の前にあるお店をさして「ここ美味しいよ」って歩き出すからあたしもそれについて行く。
さっき、米内さんは何かを言いかけてやめた。
恐らくあたしが智史の元カノだということに気づいたんだろう。
あたしはただひたすらに米内さんが智史に何も言わないことを願った。
名前を聞くだけで泣きそうになるほど未練たっぷりだとは知られたくなかったから。
「本当だ、美味しい」
「だろー?ここはハズレがないんだよね」
如月さんに連れてきてもらったお店は出てくるものがとびっきり美味しくて、さっきの荒れていた心を癒してくれる。
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