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「如月さんって天然タラシですよね」
「えっ、急になに?酔った?」
「酔ってません」
「酔ってないって人ほど酔ってんだよー。ほら、水飲んで」
いつの間にかお酒ではなく目の前にあったのは水。
「あたしお酒頼まなかったっけ……?」
「ハイボール頼んでたけど、水に変えてもらったよ」
こういうところ。
さりげなくこういうことしちゃうところがいけない。
「放っといてくれたらいいのに」
「何言ってんの。ほら、水飲んで」
あたしの手に水の入ったグラスを持たせる。
触れられた手が熱を持っていくような気がする。
せっかく新しい恋をみつけられそうなのに、この気持ちはしまっておかないといけなくて、元彼のことは全然忘れられない。
そしてまたこの前と同じくお酒ににげて、なにをやってるんだろうか。
「天然タラシめー」
「なにその天然タラシって」
「こういうこと無自覚にやってそうだし、そんな如月さんに心を奪われる人多そうですね」
「なになに、澤上さんも心奪われたって?」
冗談ぽく聞いてくる如月さんにもしもそれを認めてしまったらどうするつもりで言ってるんだろうかと思う。
自分に気がなさそうだからあたしとご飯を食べたりしてくれるのはわかってる、でも触れられた手の温もりが忘れられないあたしはどうしたらいいのだろう。
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