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「そうですよって言ったら責任とってあたしと男女の関係になってくれるんですか?」
顔を上げて如月さんをみる。
あたしの表情に冗談じゃないことが伝わったのか、空気がピンッと張り付いた気がした。
「……あー……」
あたしから目を逸らし、気まずそうに口にして、その視線は泳いでる。
分かっていたけどこれは完全に脈ナシだ。
「如月さんはどうしてあたしと話してくれてたんですか?」
「俺の事好きじゃなさそうだから」
「あたしがただ気持ちが外に出にくいだけですよ、それは」
明らかに合わなくなった視線に寂しく感じながら、本人はそう思ってないけど、いつまでも思わせぶりな態度を取られるよりもいいとすら思う。
もうこうしてご飯を一緒に食べることもなくなるんだなぁと思ったら少し寂しくなってしまうけど。
「俺はやめておいた方がいいよ」
「それを如月さんがいうのかぁ……ちなみにあたしは入社式からいいなと思ってましたよ」
やめておいた方がいいといいながら彼の視線はこっちにくることはなく、ずっとスマホのストラップに向けられている。
「もーらい」
気まずさを隠すために、如月さんの前にあるくちをつけられていないハイボールを奪う。
「まだ飲むの?」
如月さんもそんなあたし乗って話してくれる。
今この場でずっと気まずい空気は嫌だろうし、こうして話を流してくれて助かる。
酒の力がなかったら言ってなかったんだろうけど、惨めな気持ちになるだけで何もスッキリはしなかった。
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