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「そんなことより智史は元気ですか?」
「……っ、気づいてたんだ」
なんとなく如月さんの話題から抜け出したくて、気づいたら智史の名前を口にしてた。
そんなあたしに米内さんは一瞬口をぽかんと開けたまま固まった。
「最初から気づいてましたよ。智史のお兄さんだって」
「……そっか。智史はまぁ元気。澤上さんと同じく新入社員で頑張ってるとこ」
「元気ならよかったです」
「急に智史の名前出して来ると思わなかったからビビった」
すこし気まずそうに目の前のコーヒーに口をつけてはぁっと短い息をつく。
「恨んでんじゃねぇの?智史のこと」
「恨む……とかはないですね。ずっとずっと好きですし。最近やっと新しく恋出来そうって思ったんですけど、一筋縄にはいかなさそうって感じです」
「前も今も俺の近いとこで恋愛する奴だな」
フッと笑ってわしゃわしゃっとあたしの頭を撫でる。
「あ、泰志いた……っ、澤上さんといたのか」
如月さんが米内さんを見つけて駆け寄ってきて、あたしの姿をみて表情が固まる。
練習帰りなのか、ラフな格好にドキドキするけど、またどうせ逸らされるしと思って顔はあまり見ないようにした。
「あれ、今日出社予定じゃなかったよな?」
「ロードワーク終わったとこ。グループチャットでここにいるって言ってたろ。俺も昼飯食べようと思ってさ」
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