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「米内さんは結婚してるんですね」 「そう、あいつあんなんだけど愛妻家なのよー」 「いいな……」 「ん?」 「あ、いえ!しばらく相手がいないもので!」 あたしの静かなつぶやきを拾われてしまって、慌てて取り繕うしかなかった。 弟は浮気して彼女を捨てたけど、兄はちゃんと一途に一人の人を好きでいるなんて。同じ遺伝子を持ちながら全然愛し方は違うんだななんて思ってしまう。 「澤上さん可愛いから男がほっとかないでしょう」 「そんなことないですよ。それに別れてから恋愛にあまり乗り気になれなくて。出会いもぜんぜんないです」 「……トラウマになってる感じ?」 「そうですね。2年も経つけどなかなか」 「そうなんだ……あたしも今の彼氏と付き合うまではずーっと一人の人を好きでね。やっと今の人に出会って吹っ切れた感じなんだ。だから、澤上さんもいつか絶対いい人に出会えるし諦めないでね」 ぽんぽんっとあたしの頭を撫でてくれる。 なんだか、お姉さんって感じ。一緒に住んでる実の姉がいるけどあの人はいつまでもしっかりできてないからお姉さん感がない。 「出会えますかね……」 「出会えるよ。出会ってくれないと困るし」 「……困る?」 君塚さんの最後の言葉に引っかかって首を傾げる。 「あ、変な風に言っちゃったね。幸せな恋をして元気でいて欲しいってことだよ」 「あはは、ありがとうございます」 初対面なのに優しくしてくれる先輩に心があたたかくなる。
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