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「まぁ、莱久と俺が変な関係になったのは社会人になってからかな」
「ふーん……」
「あいつ、あんまり頻繁に会えないようなやつと付き合ってて。ドタキャンとかにもなっちまうから寂しくなると呼ばれるようになって、俺は好きだから行って、あいつが寂しくないって思えるまで甘やかせてやってきた」
「……っ」
如月さんが携帯についているストラップを触りながら言うから、あぁもうやっぱり勝てっこないって思い知らされてしまう。
「でも、初めて断ったんだ。昨日」
「……え?」
そういえば、昨日カフェで家に来るように言われてた気がする。
「初恋の女をずっと忘れられない俺なんかじゃなくて他の男に目を向けるべきだと思ったんだ」
「余計なお世話ですけどね」
「でも、正力にちゃんと見といてって言ったあとはなんかあったら迎えに行きたいって思ったし、莱久には行けないって断った」
「……あたしのため、ですか?」
ゆっくりと顔を上げると予想よりも顔を赤くしている如月さんがいて、戸惑ってしまう。
「本当はさ、いいなって思ってたんだよ。初めて見たときから」
「……え?」
「だから澤上さんだけは話した。でも、澤上さんの気持ちを知って怖くなったんだ。俺は誰かと関係を深めるのが怖い」
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