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「澤上さんの名前」
「……名前?」
「愛來ちゃん」
「……っ」
急に呼ばれた下の名前にかぁーっと身体が熱くなっていく。
「俺、星那って言うんだけど」
「それは知ってます」
「俺の両親がアイルトン・セナのファンなんだ」
「え!?うちもです!!」
突然飛び出してきた共通点に思わず声が大きくなってしまう。
「やっぱり?うちの親がよく女の子だったらアイルって名前にしてたって言っててさ。結婚するならアイルって名前の子を連れてきてよなんて無茶ぶりされたこともあったんだけど」
「……えっ、結婚」
「いや、例え話だよ!?恥ずかしくなるからその顔やめてくれ」
「やめれっていわれても……」
好きな人から結婚が連想されるような事を言われて、顔が赤くならないひとなんているのだろうか。
ポーカーフェイスには自信あるけど、如月さんとこんな話してるときにポーカーフェイスにはなれない。
「澤上さんの名前知ったときに、なんかもう気になって仕方なくて。昼休みカフェで会ったときはラッキーだと思ってた」
「ホント?」
「ほんと。でも、澤上さんが俺に気持ちいってくれてからは、ちゃんと見れなくなっちゃってごめん。今日の朝泣いたのってそれが原因だよな?」
如月さんの眉が申し訳なさそうに下がる。
「今日の朝のは目が合ったのが嬉しくて……」
「はぁー……ダメだこれは。俺を殺す気だ」
目の前でテーブルに顔を突っ伏す。
「……へ?」
「可愛すぎて、ダメ。あっそうだった。これもらったんだけど明日の練習後になるんだけど一緒に行かない?」
如月さんがカバンから1枚の紙を出す。
「アイルトン・セナの展示会?」
「そう、ここでちゃんと俺の気持ち言わせて」
「……っ、はい」
明日にドキドキしながら、今日はなかなか寝付けなかったことは言うまでもない。
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