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「ま、とりあえず見ようか」
気を取り直したようにそう言って、如月さんが歩き始めるので、あたしもそれに着いて展示を眺めていく。
「こういう展示会とか来る?」
「あまり……如月さんはよく来るんですか?」
「来るね。取引先の人にチケットもらったら行かないわけにも行かないしね」
「ですよね……こういう展示会やる会社取引先に多いですもんね」
「そうなんだよ。行かないで感想とか聞かれたら困るからね」
うちの会社は自販機の取り扱いをしていて、こういう展示会を企画している会社やビルとは取引が多い。如月さんは営業だから付き合いもあるんだろうな。
「そういえば早瀬が如月さんに憧れてるって言ってましたよ」
早瀬とせっかく少しだけ同じ部署と思って安心したのに早瀬は外回りが多くて全然会わなかったなーと思ったのと同時にちょっと隙間時間であった時に如月さんを憧れの存在と言っていたのを思い出した。
「早瀬が?俺あんま指導できねぇのに」
「野球やりながら営業としても成績トップだしめちゃくちゃかっこいいって言ってました」
「めっちゃ褒めるじゃん。早瀬、明るいしトーク力もあるから成績出せると思ってるよ」
早瀬のことを思い出しているのか、とても優しい顔をしている如月さんに、後輩に対してはこういう顔にもなるんだなぁーなんて思う。
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