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「お腹減った?」
「そうですね、それなりに」
たっぷりと展示会を堪能して、ビルを出るともうお腹が空くような時間になっていた。
「じゃあ、そこにいいお店あるから行こうか」
「はい」
如月さんは結構グルメなのか、お付き合いでくるからなのかはわからないけどなかなかいいお店を知っている人だ。
如月さんの選ぶお店は外れが無さそうですこし楽しみだったりする。
「適当に注文して大丈夫?」
「はい、お任せします」
「あとさ、まずお酒なしでいい?」
「……え?」
「シラフの状態でちゃんと言いたいから」
「……っ、はい」
バチッと合わさった瞳に胸がトクントクンと高鳴って、聞こえてしまうんじゃないかってほどうるさくなる。
「そうだ、さっきの、小さい頃の話」
そんなあたしの様子に気づいたのか、フッと笑ってから話題を変える。
こういうよく人をみていて、すぐに機転がきくところが本当によく出来た人だなぁと感心する。
「あっ、はい……」
「子供の頃に家族旅行できたんだよね。たしか静岡」
「あっ、それです。あたしその時静岡に住んでたみたいで」
「じゃあ、本当にあの時に俺に言ってきたのは澤上さんってことか」
あっと思い出したようにスマホをいじる。
「これ、実家で前に見つけた写真なんだけど」
スマホの画面をあたしへと向ける。
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