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「愛來って呼んでもいい?」 「……呼んで欲しいです」 「愛來」 「……っ、はい」 ただ一言名前を呼ばれただけで幸せが充満していく。 そんな感覚知ってたはずなのに、久しく感じていなかったから心臓の音が速くなっていくのは当然だった。 「俺のことも名前で呼んでよ」 「せ、なさん……?」 「さん」か「くん」か迷ったあげく、年上だしと「さん」を選んでみると不満そうに「呼び捨てしてよ」って口をとんがらせる。 普段スタートに大人な如月さんが見せる恋人への表情になんだかくすぐったくなる。 「せ、な」 「ふっ、ぎこちないな」 「だって、慣れないから……」 「慣れてね。あと敬語もなしでね」 「……はい、あっうん」 慣れなくてすぐ敬語が出てしまうあたしに彼はケラケラと楽しそうに笑う。 「もう、からかわないでよ」 「おっ、いいね。タメ口。嬉しい」 本当にとろけるように甘い顔で嬉しいなんて言うから、このひとこんな顔するの!?ってまた新たな発見にドキドキが止まらない。 恋人という存在になってからほんの数分での情報量の多さに心臓が爆発してしまいそう。 「これからよろしくね、愛來」 「よろしく、星那」 あたしがもっとスムーズに名前を言えるようになるのはきっとすぐそこ。
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