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「……はぁ、いいところなのに」
星那の唇があたしの唇と重なって、深くなっていくそんな中で鳴る星那のスマホ。
無視していても鳴り止まないそれにはぁっとため息をついて「ちょっと待って」とあたしの額にちゅっと口付けをする。
「なんだよ、俺は暇じゃないんだけど……大丈夫だろ。初めてだからソワソワすんのはわかるけど、とりあえず今日はゆっくり寝て明日に備えろ」
相手の声は何も聞こえないけど、おそらく話しぶり的に職場の後輩かなと思う。
星那はなんだかんだ言って後輩思いだ。
「早瀬だった」
「え?早瀬?」
「そう、あいつ週末返上で出張行ってんだよ。はじめてのな。緊張して寝れないとか言ってる」
「早瀬でも緊張なんてするんだなぁ」
早瀬はいついかなるときも堂々してて、緊張してる様子なんてみたことがないので、なんだが信じられない。
「さすがのアイツでも初めて行く場所で商談してくるってのはハードル高いんかな。でもアイツなら大丈夫だよ」
「早瀬のこと信頼してるんだ?」
「まぁな。ここ数年の新人の中では1番の有望株」
早瀬のことを話す星那はなんだか楽しそうで、仕事の話だっていうのに羨ましくなってしまう。
「あたしも早瀬になりたいな」
「え?嫌だよ。早瀬だったらこーいうことできなきじゃん」
あたしの手をとって引き寄せて、そのままソファーの上で抱きしめられる形になる。
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