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「あーい」
昔と同じく、脳天気な声が中からは聞こえてきて、それと同時にドアが開いて中から出てきた智史は星那とあたしをみて目をぱちくりとして言葉を失っている様子。
「おい、固まってんぞ」
「あ、いや。なんで?」
一瞬あたしを見たあと気まずそうに目を逸らして、星那のことを見る。
「入るな」
智史の様子なんかお構い無しの様子で靴を脱ぎ出す星那に「え?ええー?わけわかんないんだけど」と言いながらも「どうぞ」と他人行儀にあたしの前にスリッパをおく。
あ、お客さんなんだって理解した。
付き合っていた頃から変わらない来客用のスリッパ2足。このスリッパをあたしは今日初めてはいた。
「えっと……星那は今日なんでうちに?……と星那の彼女さんだよね?昨日コンビニで会った」
「演技いらねぇ、バレてる」
あくまでも他人のふりをしようとする智史の頭をポンっとたたく。
「え!?なんで!?」
「お前が昨日酔っ払って全部言ったんだろうが、俺に」
「は!?嘘だろー……」
完全にやらかしたと思ったのか、その場にしゃがみこむ。
しゃがみこんであたしの目線より下になった髪の毛はモカブラウンで付き合ってた頃と何一つ変わってない。
「この髪色すっごく好き!」とあたしが言って以来この髪色にしていて別れたのに変わってないから、きっと彼にとっても気に入っていた色なのだろう。
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