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「お前の正直な気持ちを愛來に伝えてあげてくれないか?」
「は?伝えても意味ないだろ」
「ケジメ、つけてほしい。お前も愛來も」
「……ケジメ」
星那の言葉にたちあがった智史があたしを視界にいれる。
「俺、出てようか?」
「星那もここにいて欲しい」
星那のシャツをキュッと掴む。
「わかった。じゃあ、そこに座ってるからちゃんと話して」
リビングのソファーに向かう星那の背中を見つめていると「愛來」と久しぶりに呼ばれた名前に胸がきゅうっとなる。
「ごめん、傷つけて」
「もう、いいよ。あの時だって謝ってもらったし」
そう、ただほかに好きな人ができただけ。
別に智史に酷い言葉をかけられたとか、態度を取られたとかそういうことではない。
ただ、あたしがふっ切れていなかっただけ。
「今でもずっと俺が1番好きなのは愛來だよ」
「……っ、何言ってるのかわかんないだけど」
あの日たしかにあたしは目の前の人に振られたはずで、そんな彼の口から出た言葉は到底信じられないもので、思わず振り向いて星那を見てしまう。
そんなあたしに星那は頷いてくれて、なんだか大丈夫だと言われてるような気になった。
「ずっと後悔してた。失ったものが大いいことに気づいたときにはもう結月といた」
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