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「遅すぎじゃない?」
「愛來の言う通りだよ。俺にはもうどうすることもできないから、星那に幸せにしてもらえよ」
ポンっとあたしの頭に手を触れる。
「最後に抱きしめたいんだけど」
「……え?」
さすがにそれは……と思って星那に目をやると「最後にさせてやりなよ。もう二度とないんだから」と笑っていた。
「星那がいいって言ってるからいいよ」
「ありがとう」
智史の腕が伸びてきて、次の瞬間にはあたしは智史の腕の中にいた。
「変わってねぇな、愛來の匂いだ」
「うん、智史も変わってない」
当時と何ら変わりのない匂いは幸せだった日々を思い起こされる。
「俺がこれからの愛來の未来にいたかった」
「智史があんなことしなかったらいれたはずだよ」
「分かってる。俺に恋を教えてくれてありがとう。幸せをたくさんありがとう。好きになってくれてありがとう。俺が幸せにするって約束したのに幸せにできなくてごめんな」
息継ぐ間もなく言葉を紡いだあと「終わり」ってあたしのことを解放する。
「ケジメ、つけさせてくれてありがとな」
ソファーから立ち上がった星那は解放されたあたしの手を握って、そのまま玄関へと向かう。
「……大丈夫?」
エレベーターに乗ってすぐ、あたしの顔を覗き込む。
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