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「お願いされても応えることはできないよ。愛來、昼休み時間もったいないから行こう」
「あっ、今度の社員旅行はグループ会社も一緒なんだって?」
あたしの手を握って歩き出した星那にまだ牧野さんは話し続けてる。
「それがどうかしたか?」
「グループ会社だから莱久も一緒だろ?」
「そうだな」
「1波乱あるかもねぇー楽しみだね」
何が楽しいのかケラケラと笑っている牧野さん。
「何も無い。愛來気にしなくていいからな」
「うん、大丈夫」
社員旅行は今週末に行くことになっている。
星那とどこかに旅行なんて行ったことがないし、社員旅行ではあるけど一緒に行けることがちょっと楽しみだったりしたのに。
よく考えたらグループ会社の莱久さんも一緒だってわかったはずなのに星那と一緒だということにしか頭が回らなかった。
「なんで牧野さんはあんなに星那に執着してるの?」
「彼氏と会えなくて寂しくなったときはいままで俺がいたから。その相手がいなくなって荒れてんのを見てられないんじゃない?アイツ、極度のシスコンだから」
「莱久さんから連絡は?」
「着拒してるから」
「え!?そうなの!?」
莱久さんは元カノではあるけど、大事な幼なじみでもあるのが分かったからそこまでしているのは意外で大きな声が出てしまう。
「うん、余計な心配事ふやしたくないからな。でも仕事の付き合いもあるし社用携帯は拒否できねぇけど」
仕事の付き合いってのは切れないものではあるので、さすがにあたしも咎めるつもりはない。
でもプライベートを排除してくれたのはかなり嬉しかったから「ありがと、大好き」って抱きついた。「莱久とはもう何も無いから、気にすんなよ」って抱きしめ返してくれる。
色んな思いが交錯する社員旅行まであともう少し。
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