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「あたしの方がずっと前から好きだし、最近星那に出会ったような人に負けない」
「いつからとかそんなの意味ないです。それにずっと星那のこと傷つけてきたくせに」
それだけ特に振り向きもせずに言ってくぐろうと温泉の暖簾に手をかける。
「ふざけてるの?」
「はい?」
莱久さんの言葉があたしの足をとめる。
「ずいぶんと自信満々みたいだけど、星那がずっと自分のところにいるなんて思わない方がいいよ。だいたいあたしのことだって急にもうやめないとか言うんだもん。心変わりなんてすぐだよ」
「当たり前だなんて思ってないですよ」
そんなこと前回の恋愛を通してあたしが十分にわかってる。だから、星那がいる当たり前にあぐらをかくつもりもいし、日々努力だって怠ってないつもり。でもそれと星那を信じるは別物だと思ってる。
「とにかく、あたしたちは温泉の時間だから!」
柚月さんがあたしの腕を引く。
「話し終わったらいいですよ」
こちらの都合なんておかまいなしで、これ以上なんの話があるというのだろうか。
「話なんかないんですけど」
「星那を返してくれるって言うまで温泉にはいらせないって言ったら返してくれる?」
「そんな幼稚な……それに星那はものじゃないですよ」
バカバカしくて付き合ってられなくて呆れてしまう。
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