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「あなたにはもっと別な人がいる!だから返してよ!どうにかなりそう!」 バッとあたしの腕を掴んできた莱久さんに「こっちがどうにかなりそうですよ」とその手を振りほどく。 「なになに、どーした?」 ちょうど振りほどいて、莱久さんが尻もちをついたところに温泉に入りに来ただろう泰志さんが彼女のことを起き上がらせる。 「……?莱久?」 泰志さんの後ろから現れたのは星那で「星那!」と彼に駆け寄る莱久さん。 「愛來ちゃんに星那に近づかないでって突き飛ばされた!」 目に涙をためて甘ったるい声を出す。 さっきまでとは全然ちがう、はじめてカフェで会った時と同じような声。 「……え?」 そこではじめてあたしがいることにきづいたようで、視界にあたしが入ると同時に莱久さんに掴まれていた腕をそっと解く。 「俺、莱久とはもう何も無いっていったよな?」 「えっと……」 あたしを見る星那の瞳がいつもの優しい目をしてなくて、少し怒りとイラつきを含めた色をしていて、言葉に詰まる。 わかってる、あんなふうに言われたらなんで信じてくれないんだとなるくらい。 でも、あたしはそんなこと言ってなくてまずはあたしの話しを聞いて欲しかったなんて思っちゃいけないだろうか。
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