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「えっ!?なんでお前がここにいんだよ」
スターラッシュのギタリストの奏多くんが目を見開いてそしてこちらに駆け寄ってくる。
「俺らも社員旅行でさ」
「社員旅行なんだ。で、この子は?」
「俺の彼女」
「へー、どうもー。星那の高校の同級生の奏多ですー」
あたしに握手を求めてくる。
「ど、どうきゅうせ……「え!?莱久!?」
あたしのことを視界に入れたあと、後ろを見て立っている莱久さんの名前を口にする。
星那の高校の同級生ってことは莱久さんの同級生でもあるか。
「かな、くん……」
「莱久っ、まさかこんなとこで会えるなんて」
そのまま莱久さんの手を引いて自分へと引き寄せる。
「めちゃくちゃ会いたかった」
「うん、あたしも」
そこだけ二人の世界に見える様子に星那とあたしは会場を出る。
「あの二人って……?」
「奏多が莱久の彼氏だよ。大学の頃から付き合ってる。ただ俺らが就職した頃から人気バンドになってなかなか会えなくなってな。それで俺で寂しさを紛らわせてたってわけ」
「そうだったんだ……」
さっきの安心材料って言ってたことを思い出す。
「莱久は俺じゃなくて奏多のことが好きだよ。俺には執着みたいなもんだったのかな。愛來に見て貰えば不安もなくなるかなって」
「そっか。連れてきてくれてありがと」
星那なりに不器用だけどあたしたちのことを考えてくれていてほっとする。
「俺、愛來のこと悲しませてばかりな気がするけど、本当に好きだからそれだけは忘れないで」
「うん、大丈夫」
付き合う前の星那はスマートででも恋愛を拗らせていて、それでも好きな人に一途だったって知ってる。
きっとこれからも衝突することはあるだろうし、泣くこともあるだろう。でも、好きな気持ちを信じたい。
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