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「ありがとうございます、ビールにします」
差し出されたメニューを受け取ったけど、大してみることもせずに注文を告げる。
「え、愛來そんなにビール飲めないじゃん」
「飲みたい気分なの」
普段はハイボールは沢山飲めるけど、ビールはそんなに得意じゃなくてあまり頼むことはない。
そんなあたしに和歌は心配そうな顔を見せる。
「なーに、荒れてんだよ」
ポンっと頭に手を置かれて、聞こえてきた声は智史。
「……智史」
「なんかあったのか?」
あたしの向かい側の席に座って、優しい表情を見せる。
「ううん。飲みたいだけ」
「そっか」
何かあったなんて絶対分かりきってるのに、なにも聞かないでいてくれる。
そういうところは昔となにもかわってないなと思う。
「ふたり寄り戻したの?」
「そんなわけねーだろ。あんなに傷つけたのに」
和歌の言葉に「ばーか」と続ける。
「……何あったかしらねぇけど、思い詰めん……な!?」
「智史?」
あたしの背中側をみて目を見開いてく智史に首を傾げる。
「よっ、智史。お前もここで飲み会だったんだ」
星那の声が聞こえてあたしは固まってしまう。
「ちょっと智史と乾杯でもしとくか……ちょっとビール取って」と隣の個室に顔を出したあとそのままこちらの個室に入ってくる。
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