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 ◇  ハルジオン辺境に来てから穏やかな日々が続いた。  アーサー様は一緒にいく先々で、俺の大切な婚約者だと紹介してくださるので、恥ずかしいのに胸の奥がくすぐったい。 「シャーロットは、食べ物はなにが好きだ?」 「食べられる物ならなんでも好きそうですけど、そうですね……焼き菓子が好きです」 「そうか!」  返事をした翌日に大量の焼き菓子を贈ってくださって、目を丸くしながらメイドの皆さんとお茶をしたこともある。  それから、メイド達と仲良くなって、アーサー様の好きなサンドイッチを差入れした。とても喜んでくれて、赤獅子というより懐っこい犬のようで、かわいいと思ってしまう。 「シャーロットは、好きな色はあるか?」 「自然な優しい色が好きですが──今は、赤色、が好きです」 「そうか!」  返事をした数日後に赤色の宝石や髪留めが箱いっぱいに贈られて、高価すぎる贈り物に震えてしまった。お返ししようと思ったのに、メイドの皆さんにいい笑顔で飾り立てられてしまう。アーサー様に会いに行ったら、真っ赤な顔で似合ってると言われて、私も赤色の宝石くらい真っ赤に染まってしまった。  お礼にアーサー様が好きな翡翠色で刺繍を刺したハンカチを差し上げたら、額に入れて飾ろうとするので全力でお止めした。
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